原発大事故から7 年がたって

 独占資本の利潤追求は人々の命と健康をどこまで奪う


 あれから7年がたったというのに、福島事故原発については事態が全く改善されていない。第一の1〜4号機の周辺地盤を凍結させて格納容器の建屋への地下水流入をなくすはずの「凍土遮水壁」は完成したのに、流入地下水はさっぱり減らず、高濃度汚染水は1か月で約1万トン増える。少し減ったかに見えた流入水は、台風や大雨でまた増えて、解決には程遠い。貯蔵タンクは敷地にあふれる。地下水の流入をなくし、汚染水の増加を防ぐにはどうすべきかはかねて書いてきた通りである。
 格納容器のどこがどのように破損しているかの特定さえまだできない。そのため格納容器に水を張って核燃料デブリを上から取り出す水棺方式はあきらめざるを得なくなった。大がかりなロボットを開発して横から穴をあけてデブリを取り出す方式を考えているが、極めて難題だ。(本当はデブリを取り出さない管理保管を考えるべき。)
 格納容器の底に落ちたはずのデブリは、まだほんの局部的にしか撮影できていない。内部装置の金属やコンクリートなどとどのように溶け合ってどのような硬い合金を形成して、どう分散しているかも分かっていない。人が近づくとたちまち死ぬほどの強い放射能だから、遠隔操作で削り出す被曝に強いロボットを開発するのも容易ではない。日立、三菱、東芝などの独占資本には良き利潤追求手段となるであろうが。
 まずは必要な、1、2号機建屋内プールに保管されている使用済み核燃料の回収さえ高線量のがれき等に阻まれてままならず、3年先送りとなって事故終息を遅らせる。東電も国家・原子力規制委員会も、きちんとした遮水壁を造ることはせず、増える高濃度汚染水は、いずれ海に放流するつもりである。トリチウムや残存ストロンチウムなどの絶対量は大量になるが、大平洋の希釈に任せるという方針である。
 県内の子どもの検査で甲状腺がんと診断された人は、昨年11月までに154人、疑いが39人となっている。各種放射能に起因すると思われる病気が増えている。「原子力緊急事態宣言」はいまだ発せられたままであり、福島県民は年20ミリシーベルトまで被曝してもよいとされ、「放射線管理区域」に住めとされる。自主避難者への住宅の無償提供などは昨3月に廃止された。被曝線量を年間1ミリシーベルトの限度に戻し、避難者と居住者に対する継続的な支援を提供させることは不可欠である。

 再稼働の動向と原子力規制委員会

 原子力規制委員会は政府や経産省とともに、独占資本のための国家機関であることをますます露わにしている。神戸製鋼所や三菱マテリアル等の品質データ改ざんで原発や原燃に使われている部品もあるが、問題なしとする。大型原発については、運転年数延長、再稼働許可の動きが顕著である。100キロ圏内はもとより、30キロ圏内の住民の安全な避難計画の策定も訓練の実施も審査の対象に入れないままである。
 増加する使用済み核燃料は再処理もできず、最終処分場も決まらないままである。
関電も規制委も30キロ圏を持つ滋賀県の知事や県民の意思を無視する。関電高浜3、4号機と、九電川内1、2号機がすでに稼働している。関電大飯3、4号機と九電玄海3、4号機は、新基準をパスしており、どちらとも3号機が3月、4号機が5月に再稼働を予定している。大飯3、4号機といえば3年前に福井地裁が運転差し止めの判決を下し、危険性の大きさを指摘している。控訴審は昨年11月20日に結審したばかりである。控訴審で証言に立った元原子力規制委員長代理で地震学者の島崎邦彦東大名誉教授は、地質調査が不十分であり、断層から推算された地震の規模が過小評価されていると指摘している。(地震の専門家を一人ももたなくなった規制委員会はますます露骨な独占資本の御用機関となり、これを否定した。)高浜1、2号機、美浜3号機は新基準をパスして、40年を超える20年の運転延長が認められている。
 四国電力は広島高裁の伊方3号機運転差し止め命令を覆すつもりだ。首都から百キロ強にある原電東海第二原発は運転開始から40年になるが、原電・東電・規制委も延長・再稼働を進めたい。30キロ圏内に百万人近くが住み、関東には4千万人が暮らす。水戸など5市は同意権を持つ新協定を結ぼうとしている。東電柏崎刈羽6、7号機も原電東海第二と同じ沸騰水型だが、規制委は新規制基準にすでに「適合」と判断したものの、新潟県民と知事の反対は粘り強い。
 北海道沖の千島海溝沿いを震源とするマグニチュード9級の超巨大地震が迫りつつあるという予測が、政府の地質調査委員会から公表された。北電泊原発も、Jパワー(電源開発)の大間原発も、東北電東通原発も、原燃六ヶ所村再処理工場も、再稼働や完成どころではないはずである。

 おごる独占資本と我々のエネルギー政策

 
目先の利潤をすべてのものの上に置く日本の独占資本は、反動政権を擁して50年先や10年先のことさえ読めない。福島原発の事故を経験し、東芝の落日を見ていながら、いまや一基の新設には1兆円の費用がかかり、改造にも数千億円を要するうえに、廃棄物の処分については何の見通しも立たない原発にいつまでもこだわっている。
 経団連新会長の中西宏明・日立会長は安倍君のお友達のようであるが、日立が英国に計画する総額3兆円の原発の新設では政府系の国際協力銀行、日本政策投資銀行が軸となり三菱等メガ三行、東電等々が協力する。国家独占資本主義の面目躍如である。
 我々は原発を即時全面停止するためには、よりましなガスや重油や石炭の火力に一時的に頼るべきだが、陸上、洋上を含め世界で最も恵まれているはずの風力資源を活かし、太陽、水力、地熱も加えて自然エネ発電を急速に拡大すべきとした。しかし独占資本は発送電の分離も許さず、基幹送電線は原発のために空けて利用率を1〜2割にとどめ、洋上・陸上の末端送電線の敷設も怠り、風力資源等の活用を逃げてきた。
 立憲民主党の「原発ゼロ基本法案」には、原発の即時全廃と、送電網の国有化(あるいはせめてJパワーへの一元的所有化)による十分な活用と拡充と、自然エネ発電の本格的推進や、原発用に建造された揚水式発電の風力等への活用と火力の縮小を据えるべきだ。小泉元首相らの提言には、倅の人気を上げるとともに、大物反動政治家の「脱原発」の提唱に国民をほっとさせて改憲への流れを作るという意図が隠されているようにも見える。すべての原発の再稼働を中止させる運動をさらに強化して、目先の利潤のみを追求する独占資本とその反動政権をもっと孤立させよう。(原野人)


  あれから6年がたって― 福島事故原発の現況と展望

 原子力緊急事態宣言下のまま

 7年目を迎えるというのに東電福島第一原発では、いまだ「原子力緊急事態宣言」を解除できないままである。
 理由の第一は、汚染水は週に2千トンを超えて増え続け、敷地にタンクがあふれんばかりである。処理された水とはいえ、トリチウムは少しも除去されていない。放射性ストロンチウムも、セシウムも絶対量としては多量に残存している。これを海に放出したいのだが、平常時の放出規制値をはるかに超えてしまう。

  第二に、避難者を早々に帰還させてしまいたいのだが、そのためには通常の被曝規制値、年1ミリシーベルトを超えてしまう。緊急時の年20ミリシーベルトを適用しておきたい。
 
第三に、メルトスルーした核燃料がどのような状態で、何と溶け合っているのか、デブリには制御棒も分散して共存しているのかなどのことが全く不明のままである。

 注水量を減らしても

 1号機のデブリの発熱を冷やすための注水量を、以前は1時間当たり4・5トンとしていたが、昨年暮れから段階的に下げて、3トンにした。2、3号機も同様に注水量を減らして、1〜3号機で1日計約320トンだったものを約220トンまで、3割減らす方針である。核燃料に触れて発生する高濃度汚染水の発生量を減らすのが狙いだという。注水は汚染水となって建屋地下にたまる。これを抜き出して浄化処理し、一部を冷却用注水に原子炉へ戻している。だが注水量をいくら減らしても、循環量が減るというだけであって、建屋地下への地下水の流入を減らさない限り、処理して貯蔵するべき汚染水は、少しも減らない。

 地下水流入を減らす切り札だったはずの凍土遮水壁も、当初から警告してきた通り、依然としてさっぱり効果が上がらない。台風や大雨の時には平時の3倍にも跳ね上がる。初めから指摘してきたように建屋の四方にきちんとした遮水壁を設置する以外に汚染水増加を止める解決はない。四方を深く囲めば、底部にまでは不要となろうが。

 デブリの状態と取り出し

建屋内にあるプールの使用済み核燃料を取り出すのにも、建屋上部のがれき撤去やクレーンの設置等々で、まだ何年もかかる。2号機では、格納容器内にロボットを入れて中の様子を見ようとしてきたが、なかなかうまくいかない。目下、格納容器の台座に穴をあけ、サソリ型のロボットを送りこんでデブリの直接撮影を試みている。今までの投入された約40台のロボット中7台が未帰還で、他も強い放射線などによって破損し、要所の撮影には至っていない。破損した格納容器を修理して水棺状態にして、上からデブリを取り出す構想も、様々な物質と溶け合って固まっているだけに、想像を絶する困難な作業となる。水棺方式をあきらめて横から取り出そうという構想も、極めて危険で困難な作業となる。
 40年かけてもできることか疑わしいだけでなく、どれほど多くの労働者を犠牲にせずにはすまないことか。またどれほど経費が膨張してゆくことか。経産省は福島第一の廃炉や賠償などにかかる費用がこれまでの想定の2倍の21・5兆円に上るとの見積もりを示した。廃炉費用は2兆円から8兆円に4倍増となった。こんな廃炉構想を進めることによって、これがさらにどこまで増えることか。

 東電と安倍政権と経産省

金融独占資本をはじめとした債権者も大株主も、原発を推進してきた経営者も、政治家も、何の責任をとることなく、破綻したはずの東電は存続し、電気料金の上乗せと国税とによって、すべては勤労諸階級からの追加搾取に転嫁される。一方で、福島各地に出されていた避難指示は、安倍政権の下で、速いペースで解除して、「放射線管理区域」(3か月1・3ミリシーベルト)の4倍にあたる年20ミリシーベルトもの被曝をしかねない地域にまで住めという。避難指示に基づかない、いわゆる自主避難者への住宅支援(約1万2千世帯)は3月末で打ち切るという。
 他方では、東電は原発事業を切り離して分社化し、ほかの電力会社の原発部門との連携を進めるという。「発送電の分離」は、すでに送配電網の分社化でごまかして、そのまま東電ホールディングスや各電力会社の配下にある。東電の廃炉費用も他の原発の廃炉費用も、「託送料金」に上乗せして、すべての電力利用者に負担させるという。自然エネルギーを中心とする「新電力」(電力自由化で新たに参入した電力小売り会社)から原発以外の電力を買おうとしても、高い宅送料をとられて、原発の費用を支払わされる。そればかりか、すべての「新電力」にも、原発による電力を一定量使わせることにするという。そのうえ「過去に原発で作った電気の料金は、事故に備えて上乗せしておくべき賠償費用が反映されていなかった」として、「新電力」に移った消費者も含めて追加の費用を請求するという。

 メーカーの横暴
 横暴なのは電力独占資本ばかりではない。三菱重工がフランスのアレバ社と合弁でトルコに建設を目指しているシノップ原発(110万キロワット級を4基)をめぐり、地震の揺れ(耐震設計の目安となる基準値振動)を最大400ガルと、極めて小さめに評価していたことが分かった。耐震化工事などで建設コストが高くなるため、小さくしたのであろう。トルコも日本と同様、有数の地震国だ。日本では九電川内原発で620ガル、関電大飯原発で856ガルを想定し、1000ガルを超える原発もある。日本のこれらの数字も、過小評価であり、計算方式を見直さなくてはならないと、地震学者で前規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授が警鐘乱打している。ましてトルコの数字がいかに過小評価であるかは論を待たない。
 三菱は最新鋭戦車もトルコに売る計画である。地震ばかりでなくクーデターやテロがよく起こる国であるが、目先の利潤のためにはどこまでも商売優先である。原発輸出関連でいえば、ベトナムは原発計画を中止した。ベトナム国会は、日本とロシアから受注することになっていた初の原発建設計画を中止することを昨年11月に決定した。中部ニントアン省の2カ所に100万キロワットの原発を2基ずつ造ることを決めていたが、安全性やコスト増や財政難や核廃棄物問題によって、中止を決断した。官民一体で売り込んでいただけに、メーカーも安倍政権も痛手となった。ベトナムは日本の独占資本にとって、交通、火力発電などインフラや軍艦をはじめ、今後あらゆる産業で輸出を拡大したい国であり、原発中止の流れを止めたいところである。健康問題と高齢を理由に仕事を辞めたいという天皇を鞭打って限度まで活用し、独占資本とその安倍政権は、夫妻にこの3月、ベトナムを訪問させる。

 メーカーの苦境と活路

東芝は原発メーカーの中でももっとも苦境に立っている。2006年にウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を6千4百億円で買収した東芝は、それまでWHと提携してきた三菱重工などと競り合って、高すぎる買い物をしてしまった。WHの加圧水型の技術で世界の市場を支配しようという目論見をもち、東芝は30年度までに原発45基を受注するという目標にこだわっていたが、福島事故は想定を壊してしまった。米子会社のWHはさらに強気で、29年度までに64機の受注という目標を持ち、すでに米国で4基、中国で4基を受注し、米、中の他にもインドやポーランドやブルガリアやトルコなどの受注にも意欲を見せている。
 6年前からは世界的にブレーキがかかっている。この1月には近くの台湾も立法院(国会に相当)で、25年までには全原発を廃止することを決めた。原発廃止による電力不足分は自然エネルギーで補う方針である。一方では、ロシアも、またWHから技術供与の契約を結んだ中国も、日本の資本に対抗して原発輸出に懸命である。WHに損失を抱えていることが判明した上に、WHが昨年に原発建設会社CB&Tストーン・アンド・ウェブスターを買収したことがさらに裏目に出た。東芝は7千億円の損失を出し、負債が資産を上回る債務超過になりかねない事態である。「虎の子」の半導体2兆円事業を切り売りするという。主力取引銀行だけでなく、政策投資銀行に支援を要請している。国家独占資本主義のあらわな姿である。
 三菱重工はといえば、大型客船事業で累計2千3百億円の損失を出して撤退し、MRJ(三菱リージョナルジェット)で開発費が1千億円増加し、原発も国内外ともに受注が進まない。蒸気発生器の故障で廃炉となった米国の電力会社からは7千億円超の損害賠償を求められている。他方では防衛省初の軍事衛星がH2Aで打上げられた。日本独占資本の頂点に立つ三菱は、軍艦や軍用機や戦車や軍用ロケットなど、ますます軍事に活路を求める様相である。



『もんじゅ』と核燃サイクルの終焉  ― はかなく消えた独占資本の夢―

 悪夢の原子炉

 安倍政権もとうとう「もんじゅ」(福井県)を廃炉にせざるを得なくなった。「もんじゅ」を原型炉とする高速増殖炉と再処理工場(青森県)とによる核燃料サイクルこそは、燃料をプルトニウムとして増殖し、準国産燃料として、夢のサイクルになる、とマフィアのごとき独占資本とその政治的代理人たちは喧伝してきた。天然ウランに微量しか含まれない核分裂性のウラン235だけでなく、主成分である核分裂しないウラン238を燃料に転換して有効に利用できる構想である。
 炉心に、プルトニウムの酸化物と、劣化ウラン(ウラン濃縮工場で濃縮ウランを取り出した後のウラン)の酸化物との混合酸化物(MOX)燃料を使い、周りのブランケットには劣化ウランや減損ウラン(再処理で使用済み燃料から回収されるウラン)を使う。冷却材に水ではなく液化ナトリウムを使うことによって、中性子を減速させることなくウラン238に吸収させて核分裂性のプルトニウム239を作り、核燃料を増殖させる仕組みである。

 遅きに失した日本

 しかしナトリウムが漏れて水と接触すると爆発的に燃えるし、空気に触れれば激焼する。しかも出力上昇の制御性は極めて悪く、もし燃料被覆管が溶融して高純度プルトニウムが炉の底にたまると核爆発の危険さえ生じる。構造上、地震にはきわめて弱い。こんな装置が「夢の原子炉」どころか「悪夢の原子炉」であることは、とうに世界的に証明されていた。
 フランスでは「スーパー・フェニックス」を20年前に閉鎖した。ドイツのカルカーでは少しも稼働させないまま、二五年前に廃炉とし、遊園地に改造されている。米国や英国でも30年前には中止した。日本でも、せめてナトリウム漏れを起こした二一年前(初臨界の一年半後)の事故で、廃炉を決めるべきであった。仮にプルトニウムを増殖したとしても、高くつくばかりで、安全性も経済性も成り立ちえないことが実証されている。
当初にかかる費用は350億円の見積もりだったが、すでに1兆2千億円を浪費した。停止状態でも日に5千万円の維持費を要する。廃炉費は3千億円とされる。さすがの原子力規制委員会も看過できず、「もんじゅ」を運営する研究開発機構の交代を勧告してみたが、代りの運営主体があるはずもない。この運営など、計算高い電力会社が受けるはずもない。これに関わってきた技術者等自身が、現実性のない悪夢の装置であることを知っているからこそ、1万件もの点検や修理を怠ってきたのであろう。とはいえ軍事部門の独占資本とその政治的代理人のなかには、岸信介元首相を祖父とする安倍晋三首相を筆頭に、戦争立法と改憲のかなたに自前の核武装をめざす諸君も少なくない。核分裂性プルトニウム239の純度の高い物を作って、H2Aロケットなどで使える核弾頭にしたいという思いも弱くない。そのために高速炉から全面撤退するのは無念である。彼らはフランスと共同で高速炉『アストリッド』計画を進めたり、いまさら古い実験炉『常陽』(茨城県)を生かして、その余地を残すことにした。
 もっとも原発の使用済み燃料から海外委託等の再処理でできた低純度のプルトニウムならすでに48トンも保有し、長崎型原爆を六千発も造ることはできる。低純度だから、軽い核弾頭用には無理であるが、飛行機での核兵器に使うことはできる。戦争法と改憲によって、爆撃機を持つこともできる。装備されているP―1哨戒機やC―2輸送機を生かすこともできるし、MRJ(三菱リージョナルジェット)を改造利用することも可能となる。

 使用済み燃料の再処理と核燃サイクル

 高速増殖炉が悪夢と消えれば、再処理工場も無意味となる。使用済み核燃料は、再処理しないまま管理保管するほうがはるかにましである。再処理工場では第一に、燃料被覆管内に閉じ込められている放射性ガス(クリプトンやキセノンやヨウ素等)が全部大気中に放出されるからである。第二に、使用済み燃料は高温の強酸で溶かして処理するので、これに長時間耐える材質はない。ときどき穴があき放射能漏れ事故を起こすため、まともに長時間動いている再処理工場は世界でどこにもない。第三に、そのため労働者の被曝は深刻となるし、高濃度汚染水の海への排出も多くなる。第四に、プルトニウムを溶解し、溶液で扱い分離・精製するので、プルトニウムがどこかにたまり、臨界量を超えて暴走することが起こりやすい。このような再処理工場は『もんじゅ』とともに、速やかに廃止するのが当然である。
 だが目先の利潤しか考えない電力資本は、使用済み燃料を原発敷地外にもっていってしまいたい。それには再処理工場は稼働しなくとも、廃止にはしたくない。

 どこまで増える庶民負担

 再処理工場(青森県)は1993年に着工し、1997年完成予定だったものが23回も「完成延期」を繰り返してきた。建設費は当初予定の三倍にふえ、2兆2千億円を超えた。事故続きで稼働していないが、すでに7兆3千億円を浪費した。
 再処理工場と『もんじゅ』やMOX燃料工場(建設中)など、核燃料サイクル全体としては既に12兆円を浪費したが、稼働不能でも毎年1千600億円かかっている。再処理工場の事業主体は電力会社の出資する日本原燃だったが、電力会社の手におえなくなり、国が監督する「使用済燃料再処理機構」を新設して、ここに責任を移した。同機構は日本原燃に再処理を委託する形をとるが、国家が事業計画等の前面に出て、税金も使っての延命であろう。こうした延命・浪費によって、庶民の負担がこの先どれほど増えていくことか。

 高レベル廃棄物は

 政府は、再処理工場を延命させる理由に、普通炉(軽水炉)でのプルサーマル推進をおく。しかし再処理で抽出されたプルトニウムは、ウランに比べて極めて高くつく。電力会社は、英仏から加工・返還されたMOX燃料を、お義理で使わざるを得ないが、なくもがなの買い物である。原発の出力制御が難しく危険性を増すだけでなく、使用済みのMOX燃料は、普通の使用済みウラン燃料より冷却を要する期間が長くなる。有害な放射性物質の量も多くなり、再処理の方法も、そのあとの処分の方法も定まっていない。
 使用済み燃料は、前記のように再処理はしない方がましであるが、ウランとプルトニウムとを抽出した後の廃液は、様々な核分裂生成物等を持っていて、強い放射線を出す。ガラスの原料と混ぜて溶融しながらステンレスのさや(キャニスター)に納めるとはいっても、均一にガラス固化などできるはずもない。ガラスとなじみにくい物質、脆化させやすい物質も含まれる。キャニスターに流し込んだ後、固めるのに急冷すればひびが入りやすく、時間をかければ重金属(核分裂生成物)が底に沈降しやすくて局部的に放射線と熱が強くなるので、いずれにせよ脆化が速くなる。
 この点でもジルカロイの被覆管に納められた使用済み燃料のままで、空冷機密容器にいれて、十分な耐震施設の中に管理保管していく方がましである。安倍政権は沿岸海底下などに、この処分場の「適地」を定め、上意下達で決めようとしている。日本列島にはいくつものプレートがせめぎあい、無数の活断層と火山帯が走る。地下水も豊富で、海底なら海水も浸入する。地下に埋設して、10万年も閉じ込めておくことなどできるわけがない。



廃炉をどうするべきか
   独占資本の思惑と、取るべき道

40年を見
込む廃炉処理計画

 東電と政府はメルトダウンした原発を40年もかけて廃炉処理する計画である。メルトダウンした核燃料(デブリ)を取り出すためには、極めて高い放射線を遮蔽しなくてはならない。そのために格納容器を満水水棺状態にして頂上に穴をあけ圧力容器(原子炉本体)の上ぶたを外し、両容器の底にある(とされる)デブリを削り取るという。その後で原子炉も格納容器も解体撤去するという。
 それには先ず格納容器の水漏れ部分を探し出し、そこを修理しなくてはならないとする。1、2、3号炉とも冷却水がじゃじゃ漏れであるところを見ると、水漏れ部分を全部見つけて修理するだけでも大変な作業となる。
 これらの仕事には、それぞれの作業に適したロボットを開発中であるが、三菱、日立、東芝がこれを担っている。彼ら独占資本にとっては、何十年かにわたって、原発の建設に劣らぬ特別な利潤が保障されているようである。
 他方では、ロボットをいかに遠隔操作しても、それを近寄せてエネルギーを補給したり、修理したりのメインテナンスだけでも、労働者は高い被曝を受ける。

原子炉も格納容器もプールのなかへ

 かねてから大問題になっている高レベル汚染水の増加は、格納容器底部の地下室に地下水が日に400トン以上も流入していることによる。拙著などでも指摘してきたように、建屋周囲に遮断壁を設置することが不可欠である。
 上流の井戸から地下水をくみ上げて海に放流する方策も、せいぜい一割程度の流入減が見込まれる話である。しかも上流におかれた安普請のタンクから漏れ出す汚染水はこの井戸水にも入っていく。地下凍結方式も、流れの速いところまでは遮水できないし、長期的な安定性は期待できず、良策でないことは始めからわかっていた。
 底部も含めて、地下水の流出入を完全に遮断する遮水壁を早急に造ることこそ必要である。原子炉も格納容器も建屋内の汚染された機器や残骸も、建屋周囲の堅固な遮断壁に囲まれて出来るプールに収めてしまうことこそが最善と思われる。
 これによって、高レベル汚染水の果てしない増加から解放されるだけではない。原子炉や格納容器等をプールに収めることによって、水による完全循環冷却システムを作ることができる。プールには一定の屋根を設けるとしても、崩壊熱の減少とともに、やがて窒素循環冷却等々に移行することもできる。
 原子炉も格納容器も、半永久的に解体しないで、このようにして管理保管してゆくのがベターである。さもないと上述の手順で始まる解体撤去作業は、第一に被曝労働をいよいよ深刻化させずにはすまない。第二に持って行き場のない各種の放射性廃棄物をむやみに増やし拡散させることになる。


もんじゅ使用停止

核燃サイクル・原発は破綻

 原子力規制委員会が出した高速増殖炉もんじゅの使用停止命令は、当然のこととは言え、
遅きに失している。これは、核燃料サイクル全体の破綻を意味する。天然ウランの主成分が
利用できないことで、原発は資源的にも破綻だ。
 高速増殖炉がいかに安全性も経済性も成り立ちえないものかは、世界的に明らかになり、
20年も前に米英独仏などは開発をやめた。とくに先行して実用化を試みた仏の実証炉「スー
パー・フェニックス」で破綻が十分に実証されている。
 なかんずく地震列島に、ナトリウムを冷却材とする原子炉が許されてよいわけがない。

 規制委も驚く実態

 この機構で「もんじゅ」に携わる人々もこの事実を知らないはずはない。知っていたからこそ本気度もそがれ、うち続く事故にも、必要な1万点もの機器点検を怠ってきたのではないか。
 「安全についての基本認識に欠けている。こういう組織が存続していること自体が問題だ」と規制委員会の嶋崎邦彦委員長代理が批判せざるを得ないほどになっているのだ。
 もんじゅにはすでに1兆円の国費が費やされた。停止したままでも1年間の維持費は174億円もかかる。冷却材のナトリウムが固まらないように熱し続ける電力だけでももったいない。速やかに廃炉とするしかない。

 再処理工場も無用

 「夢の原子炉」が悪夢と消えたら、六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場も無用の長物となる。ここで精製されるプルトニウムを使って、天然ウランの主成分である非核分裂性のウラン238を、高速増殖炉で核分裂性のプルトニウム239に転換して活用するのが目的だ。
 再処理工場は予定の3倍の建設費を使って、2000年に使用済み燃料の受け入れを開始したが、事故続きで試験稼働にさえ耐えない。稼働しなくても維持費だけで年に1100億円もかかる。
 もんじゅと再処理工場の核燃サイクルは、すでに10兆円浪費した。ここから生まれる高レベル廃棄物(硝酸溶液)のガラス固化設備もまともに稼働できない。
 再処理は被覆管に閉じ込められている放射能を大量放出するだけでも、やってはならないことであるが、高レベル廃液タンクの冷却に失敗すれば、爆発飛散により広範な人命を奪う。再処理工場も、速やかに廃止するしかない。

 大悲劇防ぐために

 十分に改善されたと規制委が判断すれば、もんじゅの停止命令は解除される道も残されている。もし強引に稼働させれば、悲劇的な大事故によって従事者も往民も命を奪われ、西日本も、東日本も、日本海も壊滅的に汚染されるのは時間の問題となる。
 だが、核兵器用の高純度な核分裂性プルトニウムが得られるから、廃炉にしたくないという勢力が少なくないだけに予断を許さない。


原発の新基準案

フクシマから何も学んでいない

 原発の新しい規制基準案が2013年4月10日、原子力規制員会から提示された。7月から施行される予定だが、大幅な強化を装いながら、内実は基本的に福島事故を無視するものであり、再働や新設を推進するためのものになりかねない。
 原子力規制委員会が作るうとしている新規制基準案は基本から誤っている。
 第一に、福島事故を究明した上での基準案ではない。放射能があふれた事故現場では、格納容器のどこが破れているかを特定することさえできていない。ましてや、格納容器内の原炉周辺の配管、冷却水供給配管や再循環配管や王主蒸気配管や、各種の緊急冷却配管や制御棒案内管等々が、どのような状態であるかは把握できていない。
 亀裂や破断がどこにどのように発生しているのかが分からない。津波以前に、地震によって亀裂や破断が発生した可能性が大きい。これが主因で冷却材喪失・炉心溶融・水素爆発になったとしたら、防潮堤をいかに高くしようが、通常の制御室の他に制御室を造ろうが、作業拠点のいかに頑丈な免震施設を造ろうが、気休めでしかない。
 ひとたび過酷事故となると、人が近寄ってベントのバルブを操作したりすること自体が困難となる。圧力計も水位計も温度計等々も破損するか、信頼性がなくなって、的確な制御が不能となる。

 不可欠な対策が

 第二に、過酷事故になれば、高レベル汚染水があふれてしまうことを今の福島が示している。原子炉・格納容器の建屋などは、側面からも底部からも地下水から遮蔽することが不可欠である。
 海の深刻な汚染を防ぐためには、再稼働する前にどこの原発も実施するべき工事である。それが高くつきすぎて、採算に合わないというのなら、再稼働は全てやめるしかない。
 第三に、再稼働や新設のための新基準であるとすれば、使用済み燃料や高レベル廃棄物を、どこにどう処理・処分するのか、具体的に決めてからでなくては、旧規制基準と基本的に違わない。

 推進の為の規制

 第四に、大飯3、4号機の下にある断層は、4人の専門家の調査でも活断層らしいことになったのに、詳細調査を後で実施するからと、その決定を先に延ばして、稼働を許していることからも、すでに規制委員会の実像が浮き彫りになっており、新基準を決める資格などはない。
 そもそも原子力規制委員会なるものは原子力基本法に基づいて開発を推進するための国家機関であって、マフィアのごとき独占資本の恥部を隠すためのイチジクの果てしかない。
 7月からはこれに基づいて、多くの原発を再稼働に導きながら、40年を超えるものは20年の稼働延長を認め、新設も許可していく算段であろう。このような規制委員会に期待することなく、労働者と市民の闘いを強化するしかない。